YUGEN Gallery
2024.8.24 [Sat] - 2024.9.8 [Sun]
加藤康司 、土井紀子、吉田真也、山口達典
「タイムとマシンの平和利用」を2024年8月24日(土)〜9月8日(日)2日(月)の期間、YUGEN Gallery(東京都・港区)にて開催します。
参加アーティストは加藤康司 、土井紀子、吉田真也、山口達典の4名。タメンタイは本企画のキュレーションを行いました。
加藤康司は、他者の物語について、現代を生きる鑑賞者がいかに接近できるかを問いかける作品を発表してきました。3次元の図像を用いた手法を発展させた出展作は、針の位置を固定したまま時計本体が回転する映像作品を中心に、モノとしての時計と個人史を接続しながら「歴史」の周縁を象徴的になぞります。
土井紀子は、層的な構造をもった抽象表現による平面作品を発表してきました。本展出展作は、近年取り組んでいる馬とその影をモチーフとしたアクリル板へのシルクスクリーンプリントを発展させた新作です。馬の影を空間に投影する本作は、機械と映像メディアの発展による人馬の関係性の変化への示唆を含みます。
吉田真也は、土地の歴史や文化、風土などの人々の営みの痕跡を捉えた映像を残してきました。本展出展作は、自身の出身地でもある青森県で制作したもの。六ケ所村に出土した縄文時代の甕棺と使用済み核燃料をめぐる架空のナレーションが、映像や写真に映された風景の過去を重層的に物語ります。
山口達典は、人工知能やロボットとの対話的な関係性を描く作品シリーズを発表してきました。本展では、被爆三世の美術家としての自負と責任感に駆られ制作した作品群を出展。祖父の遺した事物と向き合うことで、祖父の「生」を描写します。
4名のアーティストは、個人史と引き付けて大きな物語を考えようとするアプローチを共有しています。「平和利用」という表現は、大量殺戮兵器にもエネルギー効率に優れた電力源にもなりうる核のエネルギーを人類はいかに扱いうるかという文脈で、非平和的な帰結をもたらしうるリスクを矮小化するための話術として用いられてきました。現代日本の社会生活は、このように少なからず他者のリスクを犠牲とした恩恵に支えられている一方で、個人レベルの選択肢は現実的には限られています。そこで、同様に科学技術の発展によって表現と鑑賞の手段を多様化させた美術の肯定的な「平和利用」を試みるキュレーションを通じて、美術の可能性を考えます。
- 時は刻み続ける。
機械式時計の発明以前、人は影の動きから太陽時を数えた。考古学者は放射性同位体の壊変量から相対年代を求める。
8時15分、11時2分、5時46分、2時46分、……。時を刻むのを止めた時計は、時を止めた出来事を象徴するシンボルとなる。
影は跡形を残さないのが自然の摂理だが、原子爆弾の強烈な熱線は「死の人影」を石段に焼き付けた。戦地に赴く恋人の影の輪郭をなぞったことから絵画が生まれたとするならば、美術の根源は残酷だ。
不条理がはびこり、混沌とした世界情勢のもとで、「ヒロシマ」は矛盾を受け止める語彙と度量を失っていった。日清戦争以来の軍都としての過去、あるいは原子力の「平和利用」を推進することで「平和都市」を建設しようとした時代があったことは、「平和教育」では教わらなかった。「ヒロシマの心を世界に」と反核を訴えることはしても、その延長線上で我が国の安全保障上の立場やエネルギー政策についての議論となるとトーンダウンし、口ごもってしまうのをずっと見てきた。
洞窟壁画からメディアアートに至るまで、美術は流動的な痕跡を留め置き、現前しない存在を伝え残そうとしてきた。時計が時を刻むのを止めても、社会は忙しなく動き続け、イメージは横溢し、淘汰されていく。そうして正義のイメージを無垢に流布するプロパガンダが跋扈する。これに対抗するためには、直線的に整理されてしまった公的記憶を錯綜させなければならない。時間と空間の軸を設定し直すことで、単層的に整備される以前の過去への道筋を探さなくてはならない。
「タイムとマシンの平和利用」は、壊れゆく過去の記憶と陳腐化した技術を掘り起こし、知覚可能なかたちで動かし直そうとするものだ。そのために、広島で広島の話をするだけでなく、広島と青森を扱った虚実ないまぜの画と音を東京の空間に満たす。そうして秩序と戯れることによってこそ、この矛盾だらけの社会の構成員としての当事性を回復しようとする。そんな「賭け」へと誘惑するのだ。
ステイトメントとトークイベントの情報を更新しました。(2024/08/05)
会期の延長について情報を更新しました。(2024/08/30)
1994年生まれ | |
2016年 | 弘益大学校(韓国)交換留学 |
2021年 | 東京藝術大学大学院グローバルアートプラクティス(GAP)専攻修了 |
現在 | 行き止まりスタジオ主宰。PARADISE AIR共同ディレクター URL:https://www.kojikato.info/ |
2023 | 「自主回顧展:もう一度思い出す」AI KOKO GALLERY(東京) |
2022 | 「空想紀行 / Real Imaginary Travelogue」AI KOKO GALLERY(東京) |
2021 | 「For Whom We Fight ”A面”」gallery G(広島) |
2021 | 「For Whom We Fight ”B面”」THE POOL(広島) |
2021 | アートアワードトーキョー丸の内2021、審査員 木村絵理子賞 |
2019 | 「爆発の輪郭線」Toride Genkan Gallery(茨城) |
2019 | 「父を語ることは、世界を語ることかもしれない」blanClass(神奈川)受賞歴 |
略歴
1994 | 青森県生まれ |
2017 | 秋田公立美術大学ビジュアルアーツ専攻 卒業 |
2021 | 東京藝術大学大学院映像研究科メディア映像専攻 修了 |
2021 | 札幌国際芸術祭2020 ※新型コロナウィルス感染症の影響で開催中止、同芸術祭オンラインプロジェクトへの出展 |
2021 | 国際交流基金主催 オンライン展覧会「距離をめぐる11の物語:日本の現代美術」 |
2021 | L’ AltroGiappone主催「RESISTERE/RINASCERE」/ ナポリ国立考古学博物館 |
2022 | 「東京ドキュメンタリー映画際2021」新宿 K’ s シネマ / 東京 |
2022 | 「歩行の筆跡(ディスクール)」(平井亨季との二人展)タメンタイギャラリー鶴見町ラボ / 広島 |
2023-2024 | リフレクティング・ヒロシマ EXHIBITION「往復書簡 /Correspondance」連続ワークショップ |
略歴
1996 | 広島県生まれ |
2020 | 広島市立大学芸術学部美術学科油絵専攻卒業 |
2022 | 広島市立大学芸術学研究科博士前期課程修了 |
主な展示歴
2021 | 個展 Gセレクション「フィリップ・K・ディックは羊の夢を見たか?」gallery G / 広島 |
2021 | 「アート展示 第2期」/ Azure Hiroshima Base(広島市) |
2022 | 「Inch by Inch」タメンタイギャラリー 鶴見町ラボ / 広島 |
2022 | 「2199年」TAKU SOMETANI GALLERY / 東京 |
2023-2024 | 「DEJIMASTOCK ART×INTERIOR #7」DEJIMASTOCK/広島 |
2024 | 「光を浴びて」タメンタイギャラリー鶴見町ラボ/広島 |
HP:https://www.yamaguchitatsunori.net
Instagram:@yamaguchi_tatsunori
略歴
1997 | 山口県生まれ |
2000-2003 | アメリカ合衆国・バージニア州で過ごす |
2015 | 広島市立基町高等学校 普通科創造表現コース 卒業 |
2019 | 広島市立大学芸術学部美術学科油絵専攻 卒業 |
2020-2021 | 広島市立大学芸術学部油絵専攻 実習補助員 |
2021 | 広島市立大学大学院芸術学研究科造形芸術専攻絵画研究分野博士前期課程 修了 |
現在 | 広島市立大学大学院芸術学研究科造形芸術専攻絵画研究分野博士後期課程 在学中 |
2021- | 広島市立大学芸術学部版画工房ティーチング・アシスタント |
主な展示歴
2019 | 土井紀子・岡里実 二人展「sensor」(広島市立大学芸術資料館) |
2020 | 三都半島アートプロジェクト(香川県) |
2021 | G セレクション 個展 “Imprinted Phenomena“(ギャラリーG/広島) |
2022 | おりづるタワー WALL ART PROJECT |
2022 | 版画展 「merry-go-round」(タメンタイギャラリー鶴見町ラボ/広島) |
受賞歴
2018 | 第 37 回 三菱商事アート・ゲート・プログラム 入選(MC FOREST/東京) |
2019 | 第 42 回 三菱商事アート・ゲート・プログラム 入選(MC FOREST/東京) |
2019 | 第 45 回 三菱商事アート・ゲート・プログラム入選(MC FOREST/東京) |
2020 | 「4×6 Compact Art Competition」 |
2020 | 「Liquitex THE CHALLENGE」入選 |
2022 | 第1回FEI PURO ART AWARD 入選 |
instagram: @kiko_doi