具象から、だんだんと抽象へ/はる インタビュー

淡い色の絵具をつかった完全抽象作品を展開しているはるさん。抽象作品でありながら、小難しい印象を与えさせない柔らかい空気感が印象的です。見た人がなにか感じたり考えたりしたことがあったら、なんでも聞いてみたい ― そんな思いの現在に至るまでの変遷と、背景にある考えを伺いました。


かなり抽象的な作品が多いように思うんですが、ずっと一貫して抽象的な作風なんでしょうか?

最近は完全に抽象的な表現になっていますけど、学生時代は写実表現に重きを置いていたころもありましたし、だんだんとという感じでしょうか。一番最初の展示は全部自画像だったんですけど、そのあと、身近なもの、飲み物とかを描きたいと思っていた時期があったり…。定期的に展示の機会を持ってきたので、振り返って案内を並べてみるとだんだんと変わってきたなというのが分かりますよね。

なにか作風が変わっていくきっかけのようなものがあったんですか。

大学の専攻が写実表現に重点を置いていて、写実表現をすごく頑張ってみていたんです。ただぎりぎりまで頑張ってみたからわかったことでもあるんですけど、自分はそっくりに描くことをきわめるって方向じゃないなって、あるとき気づいたんですよね。それで、大学を卒業してからは、自分の表現したいものを描いていこうというなかで、だんだんと自分は抽象的な表現が描く方向かなと思うようになってきたんです。

抽象表現のどんなところが合っているんでしょう?

写実的に表現しようとすると、対象を見て、描いて、また見て、描いて、という作業の中で、見る時間と描く時間の間にタイムラグみたいなものがあるじゃないですか。その点、抽象表現の場合は見る時間とのラグがないので、直接的に描けるところはあるかなと思うんです。自分の一番表現したいものを描けるというふうにいまは感じています。

最初の頃、身近な具象的なもの、たとえば靴下とか、コーヒーとか、食品とかを描いていた時期があるんですけど、そういう身近なものをすごく大きく描く作品に挑戦していたんです。ただ、やっぱりどこか描ききれていなかったと思うんです。その点が、抽象的な作品を描くようになって、描ききれているような気がするんです。

作風が変化していく中で、なにかが変わったんでしょうか

絵一枚に作者の思いとか考えをすべて表現するというタイプもあると思うんですけど、私の場合は、見る人のほうが、私の作品に自分の思いを入れてみてほしいと思っていて、それも含めて作品として完成するのかなと。何枚も絵を飾って、でも絵は物体でしかなくって、そこからなにか、なんでもいいから感じてもらえるような、オブジェというか、そういうイメージでいまは取り組んでいるんです。

作品について説明したり、物語ったりすることについての考え方などありますか?

ちょっと迷ってるところはあるんですよね。タイトルも一応つけてはいるんですけど、なにか意味を表現して、みるひとに意味をとらえてもらって終わり、というよりは、意味なく、感じてもらう人がいてくれれば、という感じですかね。なので、見た人がなにか感じたり考えたりしたことがあったら、正解とかじゃなくって、なんでも聞いてみたいなって思うんです。なにか感じてくれた人と心が触れ合えれば…と思っているんです。