
アートとお金は、往々にして問題を含みます。その一番の原因は、直感的に「これはいくら」と作品の金銭的評価をできないことだと思います。そして100万円の絵を飾ったところで、満足度や売上といった金銭的指標として評価しづらいものです。価格上昇が見込まれる作品には資産性がうまれ投資の対象となり、オークションで桁違いの価格で取引されることがある一方で、駆け出し作家のところにはなかなかお金が流れていかないことに問題意識を抱えています。
アーティストフィーとは、アート作品制作にかかわる対価のうち、すでに完成している作品の売買によるものでなく、イベントやオーダーにより作品制作を委託する場合に支払われる対価のことを言います。
完成した作品自体を販売する場合は、「号単価」と呼ばれる大きさに比例した価格相場がひとつ基準として考えられています。これも門外漢からすれば違和感を禁じ得ないところではあるのですが、作家にお願いして作品を作ってもらう場合は、こうした相場すらいまいち形成されていません。アーティストフィーは、全体予算とのバランスやアーティストのキャリア、知名度、期待値といったものの相対的な判断で決めるしかなく、美術館や行政の担当者への調査によると「アーティストフィーの額が当該作品・プロジェクトに対して十分だとは思わない」という声が3分の2を占めているというのです。
やりがい搾取?藤井光×吉澤弥生がアーティストの労働問題を語る(2017年12月)
何名かの作家に取材したところ、アーティストフィーとして支払われるパターンは下記の3パターンが主にあるようです。
1.無料
2.材料費と気持ち程度
3.材料費と作品制作費(材料費の数倍程度)
とはいえ、3.のようなケースは必ずしも多くなく、適正価格のすそ野を広げていくことは簡単ではありません。高価に過ぎるあまりにアートが富裕層の趣味に閉じてしまうことも避けなければなりません。かといってあまりに安価な相場を設計することは、若い才能全体の首を絞めてしまうことになってしまいます。
そこで、ひとつの仮説検証として、チップあるいは投げ銭と組み合わせることはできないものかと考えています。つまり、相場形成に加えて「気持ち」の経済循環をつくることができないかという試みです。
ここ数年、pixiv fanbox、suzuri people、skeb、など、漫画家、「絵師」、イラストレーターなど広義のクリエイターを支援するファンコミュニティにおける投げ銭プラットフォームが続けざまに誕生しています。すでに億単位のお金が作者に還元されているとのことです。
ファインアートの分野においても、PIXTAによるmeceloというサービスが始まっていますが、ファインアートはやはり実際に見てこそ琴線に触れる要素が大きいものです。オフラインにアートを広げ、オンラインで販売することで、双方の長所をうまく掛け合わせタイと思っています。
実証実験第一弾として、民泊施設の室内壁面に壁画を制作しました。泊まった人にも楽しんでもらって、お金が循環したならば、という企みです。民泊以外への展開も検証できればと考えておりますので、もし「なんとなく寂しい」スペースをお持ちの店舗、施設、企業さんがいらっしゃれば、落としどころを一緒に考えていただけるととても嬉しいです。
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