タメンタイギャラリー鶴見町ラボでは、作品と場所や空間の関係に特に焦点を当てながら、想像力を喚起する企画を展開しています。太田川三角州を構成する京橋川を望む古い集合住宅の一室という空間条件にこだわった価値創造に注力しています。この空間だからこそ意味のあること、発表すべき表現を展開するアートスペースです。
近代以降のアートの価値体系は、美術史との接続を金科玉条としてきました。こうして評価を歴史の審級に任せることは、時間への信頼に基づいています。しかしタメンタイは、時間への過剰な注目からは一定の距離を取り、時間よりも空間への注目を促す立場を取ることにしています。「ホワイトキューブ」に支えられたコマーシャルな見せ方から距離を取り、作品と空間は固有で、切り離せない密接な関係性を持っているとの前提に立っています。そして、その取り結び方の可能性を切り開いていく役割を担います。
タメンタイが創造する付加価値は、作品と空間の関係的なありかたのバリエーションです。「タメンタイ」の名は、一面的でない美術の価値をそのままに見せていくギャラリーとして、多面的な統合体を目指そうと名付けました。さまざまな空間的な想像力の喚起の仕方を展開していくのです。アーティストはそれぞれ、企画のたびに新しい空間の使い方を提示しており、同じ空間でありながら、展示のたびにまったく異なる様相を呈します。空間は静的なものではなく、ダイナミックであり、過去と現在のさまざまな参照点──ギャラリーの周辺環境や歴史、作品、鑑賞者──が「ともに投げ込まれ*」、ひとつの空間を織りなし、いまーここの認識を変容させていくのです。
タメンタイ アートマネージャー
山本 功
* マッシー, D.著, 森正人, 伊澤高志訳. 2014.『空間のために』 月曜社.